芝浦工業大学工学部応用化学科4年生のゆかりです。横浜市出身で、大学1~2年次は大宮キャンパス、3~4年次は豊洲キャンパスに自宅から通っています。私が入学して気づいたこと・経験したことなど「リアルな声」をお届けします。今回は【第2弾】として、化学系の受験を考えている方向けに、具体的なカリキュラムなどのお話をさせていただきます。
はじめに
化学が好き、大学で化学を学びたい、将来化学系の研究職に就きたいなど、さまざまな思いで受験を考えている方がいると思います。
元々私は化学が大好きで、将来日用品メーカーの研究職に就いて世の中の人を笑顔にできるような素敵な商品を作りたいと思い、応用化学科を受験しました。大学に進学してみると、化学を学んで、化学系の職業に就ける学科は他にもあり、応用化学科に絞る必要はなかったようにも思います。
そこで、今回は化学が学べる学部・学科のご紹介や相違点についてまとめてみました。化学系の受験を考えている方、進路に悩んでいる方はぜひ、最適な学部・学科選びの参考にしていただければうれしいです。
化学が学べる大学・学部・学科
まず化学が学べる学部・学科を紹介します。
【学部】
主に理学部、理工学部、工学部
【学科】
主に化学科、応用化学科
【その他の学部・学科名称】(一部の例)
・東京工業大学 物質理工学院 応用化学系
・横浜国立大学 理工学部 化学・生命系学科
・早稲田大学 先進理工学部 化学・生命化学科
・上智大学 理工学部 物質生命理工学科
・青山学院大学 理工学部 化学・生命科学科 など
他にも材料工学科、化学工学科、工業化学科など狭い範囲の化学に特化した学科もあり、化学系とは少し違いますが、薬学部や農学部でも薬学や農学に関する化学を学べます。
化学系学科のカリキュラム
まず知っていただきたいこととして、大学での化学は高校化学と全然違うということです。これは私が入学して一番衝撃的なことでした。
高校化学は大きく分けて「理論化学・有機化学・無機化学」の3つだと思いますが、大学の授業はこれらが細分化され、それぞれの専門分野の知識が相当量あります。
一例として、私の大学(芝浦工業大学)の専門科目と実験科目を紹介します。その中で必修科目/選択必修科目は赤マーカー、私が履修した選択科目は青マーカーで記載してあります。(現在のカリキュラムは変更されたようなので一例として参考にしてください…)
- 1年次
前期:基礎科目S,化学工学1,無機化学1,有機化学1,工業化学概論
後期:物理化学1,有機化学2,無機化学2,分析化学1,化学実験
- 2年次
前期:物理化学2,分析化学2,有機生物化学,分析化学実験
後期:生物化学1,化学工学2,有機反応論,応用化学実験
- 3年次
前期:有機構造決定法,生物化学2,環境化学,化学熱力学,セラミックス化学,高分子合成化学,
電気化学,分離工学,有機合成化学,化学英語,有機化学実験,化学工学実験
後期:応用生物化学,高分子物性,無機材料化学,無機物質化学,資源化学,地球科学,光化学,
有機マテリアル化学,ケミカルバイオロジー基礎,物理化学実験,化学工業総論
- 4年次
通年:応用化学ゼミナール,卒業研究
専門科目と実験に加えて、数学や英語、人文系科目などの一般教養も履修しないと卒業できないので、1・2年次は特に忙しいと思います(笑)。1・2年次で単位を落とさなければ、3年次以降は興味のある分野の専門科目のみの履修で大丈夫です。私は有機化学に一番興味があり、研究室も有機・高分子系がいいなと思っていたので、有機化学・高分子化学に関する授業を中心に履修しました。
このように、大学では高校とは比べ物にならないくらい深く化学を学べるので、(学部卒と院卒では就職先や職種が変わってきますが)化学の知識を生かした職に就く人が多いです。
ここからは余談ですが…
大学では、教授が研究で多忙なため、高校や塾の先生のように丁寧に教えてくれるとは限りません。テスト勉強や実験レポートのためは、自分で調べて主体的に学ぶ必要があり、慣れるまで大変なこともありました。ですが、友達と議論したり教えあったりと、高校の時とは違う学びの形があり、今ではすごくいい思い出です。
他学部(薬学部、農学部)との比較
前述したように、薬学部や農学部でも各分野に特化した化学が学べ、専門知識を生かした就職も可能です。薬学・農学に強い思いがある場合は除いて、化学が得意な人(特に女子)は化学系と迷うかもしれません。
これは私見ですが、
・『化学系を選んだ人→化学が好きな人』
・『他学部を選んだ人→化学が得意な人』
だと感じます。
化学系の学科では細分化された様々な科目ごとに『化学』を深く学ぶので、まさに『化学オタク』な感じです(笑)。他学部では化学の知識を生かしますがあくまでメインの学びは薬学・農学な気がします。大好きな化学を学びたいのか、得意な化学を生かしたいのか、そこが判断基準かもしれません。
「理学部化学科」と「工学部応用化学科」の比較
私も高校生の時、これらは何が違うのか、どちらを受験すればいいのか考えていた中で、
・「理学部化学科」と
・「工学部応用化学科」
の違いをまとめてあるサイトをよく目にしました。大体は
・「理学部化学科」は0から1を生み出す、
・「工学部応用化学科」は1を100にする
という説明がされます。確かに応用化学科では工業的利用を見据えた応用研究も多いので1を100にするイメージなのかもしれませんが、結論から言うと、受験する段階でそこにこだわりを持つのは難しいですし、気にしなくていいと思います。
応用化学科でも基礎研究をしている研究室もありますし、就職先にも大差はないように感じます(研究機関や大学に残って研究を続ける人は理学部化学科の方が多いかもしれませんが…)。
また、理学部化学科だと高分子を学ばないことが多いようなので、
・高分子を学びたい人は工学部応用化学科の方がいいのかもしれません。高校生のうちに高分子を学びたいと絞っている人も少ないと思います。実は私は高分子の研究室にいますが、高校生の時はどちらかというと苦手でした(笑)。
化学の分野で何を専門にするかということは、大学に入学して授業を受ける中でだんだん見えてくるものですし、就職先や最近の化学業界を調べた上で専攻を決めるのも一つの手だと思います。高校生のうちに学びたいことや就職したい業界などが明確な人は別として、漠然と化学が好きだと思っている人は、どちらの学科も視野に入れておいていいのではないでしょうか。
最後に
私は昔から化学が大好きでしたが、受験期には進路で悩んだこともありました。高校生の時にもう少し大学での学びに関する知識があったら、受験の仕方も変わったのではないかと思うこともあります。ちょっと長くなりましたが、この記事で私のように化学が好きな高校生の進路選択のお力になれたら幸いです。